厚生年金に加入しても老齢基礎年金が増えない理由
老齢基礎年金は、国民年金第1号被保険者として国民年金の保険料を納付するか、第3号被保険者になっていると増えます。
一方、厚生年金に加入すると2階建てで年金が増えると言われ、老齢厚生年金(報酬比例部分)と老齢基礎年金が増えます。しかし、厚生年金加入でこのように増えるのは20歳以上60歳未満の期間のみです。
老齢基礎年金の満額(40年納付)だと年間81万6000円(2024年度:68歳以下の額)です。孝子さんは20歳以上60歳未満の期間に国民年金の未納が多かったことから、老齢基礎年金は51万円にとどまっていましたが、60歳以降に厚生年金に加入しても老齢基礎年金は増えません。老齢基礎年金の代わりにそれに相当する経過的加算額が支給されることになります。しかし、これはあくまで老齢厚生年金として支給される年金です。
そうなると、老齢厚生年金(報酬比例部部分と経過的加算額)は厚生年金保険料を掛けた分増えることになりますが、65歳以降の遺族厚生年金は差額支給であるというルールから、報酬比例部分と経過的加算額の合計で増えた分、差額支給の遺族厚生年金が減る計算になります。
つまり、老齢厚生年金と遺族厚生年金の2つの合計額で見た場合、65歳までの5年間厚生年金保険料を掛けても掛けなくても、変化がないことになります。
一方で、中高齢寡婦加算61万2000円はなくなり、51万円のままの老齢基礎年金が支給されるようになるため、この2つの差額に相当する10万2000円が減ることになります。孝子さんの年金が減るのはこのような仕組みから来ています。
もし、20歳以上60歳までの未納期間が少なかったことによって、老齢基礎年金が中高齢寡婦加算よりも多い人の場合は、65歳以降の3つの年金の総合計で見ると、65歳前より増えることになるでしょう。
繰下げ受給もできない
遺族厚生年金が受けられる人は、65歳からの老齢基礎年金や老齢厚生年金の支給を遅らせて増額させる繰下げ受給ができません。65歳開始で受給するしかないことになります。
「ますます年金に頼る年齢になるのに、まさか年金が少なくなるなんて……。このまま働いて厚生年金に加入しても、結局合計額は変わらないのね。けど働いている方が収入は多いし、厚生年金保険料も支払い続けるしかない」と厚生年金保険料が事実上掛け捨てになることも承知しながら、働き続けることにしました。
かつての国民年金の未納期間が多かったことからこのように65歳以降の年金が減ってしまう事態になりました。遺族年金を受給できる場合は、遺族年金と自身の老齢年金との関係を事前に確認しておきたいところでしょう。
※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。