開封した封筒の中身は遺言書だった

良樹さんが見つけた封筒の正体はなんと遺言書だった。

封筒の中には見たこともない達筆で、隆さんの遺した財産の処分方法について書かれていた。内容についてはごくごく一般的なもので「兄弟3人で仲良く均等に分けるように」というものであった。

「これを見たとき僕の中で黒い感情が湧いてきました。今ならバレないと」

良樹さんは思わずその遺言書をくしゃっと手の中で丸め、こっそりとゴミ袋の中に捨ててしまった。そうした理由は簡単だ。3兄弟の遺産相続における財産の相続分が“3人全員平等”であったことに納得できなかったのだ。

良樹さんは上京後実家からの支援を何も受けていない。結婚をする時も、車を買う時も、家を建てる時も、何から何まで自分の力でやってきた。一方で、残りの2人の兄弟は地元に残っていることもあって、何から何まで隆さんの手厚い支援を受けていた。

2人の兄弟が受けた支援はそれぞれ1000万円を超えるだろうと良樹さんの頭をよぎる。にもかかわらず、何も支援を受けていない自分と2人の兄弟の取り分が均等。良樹さんの中で黒い感情がどんどん大きくなっていく。

気付けば遺言書はくしゃくしゃになり、ごみとなり果てていた。

事件は翌日発覚する

良樹さんの行いは意外にも早く、翌日には発覚した。

実は、長男の直樹さんは、事前に隆さんから遺言書の存在を知らされていたのだ。掃除当日、直樹さんは遅れて到着していたため後から遺言書を探したのだが、あるはずの場所から見つからない。まさかと思いゴミ袋をあさってみれば、そこからくしゃくしゃになった遺言書が発見された。

遺言書を破棄した犯人が良樹さんだと発覚するのに時間はかからなかった。仏壇のある部屋を掃除していたのは良樹さんであり、当該ごみ袋は良樹さんしか使っていなかったからだ。

早速、遺言の内容を実現するため遺言執行者に指定されていた私と3兄弟との4人で話し合いが始まった。

●遺言書を捨ててしまった良樹さん。話し合いで「衝撃の事実」を告げられることに……。後編【「兄弟に隠れてこっそりと…」不公平な遺言書に不満な男性が“掟破りの行動”で支払った「痛すぎる代償」】で詳説します。

※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。
※登場人物はすべて仮名です。