敏行さんからの理不尽なお願いに困惑する美月さん

ほどなくして離婚が成立。晴れて自由の身となった敏行さんに降りかかってきたのは、唯ちゃんの養育費問題でした。

離婚した当時3歳だった唯ちゃんが社会的・経済的に自立するまで、生活費の他に学費や医療費などを父親として負担する義務があります。2024年4月に施行された改正ADR法では、養育費問題の和解内容に基づく強制執行が可能になったことで給料の差し押さえなどができるようになっています。

ただ、現在無職の敏行さんには養育費は払えません。差し押さえできる資産もありません。年金生活の両親も養育費を負担できず、頼れるのは姉の美月さんだけ。

「離婚のきっかけを作ったのは姉ちゃんでしょ? 次の仕事が決まるまで、養育費、立て替えてもらえないかな?」

あまりにも身勝手な弟の言い分に腹が立った美月さんでしたが、かわいい姪の唯ちゃんのためなら仕方ない。教師という仕事柄、学費が払えず高校を辞めざるを得なかった生徒も見てきました。

「なんで私がこんな目に?」

まったくもって理不尽なお願いでしたが、渋々受け入れることにしました。