プロ野球選手への道のり

その後、圭太の中学進学を機に、坂元家は引っ越しした。

圭太は強豪シニアチームに入り、野球の指導は監督にお任せすることになった。

とはいえ、宗次の仕事がなくなったわけではない。野球がうまくなるためにはグラウンド以外でのことも大事なのだ。

特に宗次は食事が大切だと考えた。そこで圭太のために栄養学を学び、みやびに体を大きくするための献立を注文した。

ある夕食時、圭太がご飯を残していたことがあった。

そのとき、宗次は圭太に説教をする。

「圭太、何をしている。全部食べるんだ」

「う、うん……」

「白米の糖質がエネルギーになるんだ。それがないと満足に練習だってできないんだぞ。毎日、どんぶり3杯、それを食うって約束したろ。はやく食べなさい」

「ちょっと、今日は体調が悪くて……」

「言い訳をするな! だったら飯を食うまで席を立つことを禁止だ! ずっとこの席で過ごすつもりか⁉ 嫌なら、さっさと食うんだ!」

すべては圭太のためだった。宗次は心を鬼にして、圭太を指導し続けた。

そんな厳しい指導のかいあって、圭太はシニアチームでも早々にレギュラーを獲得し、3年次には全国大会でベスト8にもなった。

そうなれば、県内県外の幾つかの高校から推薦の話が来る。圭太と宗次は話し合いの結果、県内の野球強豪校に進むことにした。

しかし今までと違い、かなり家から離れているため、引っ越すというわけにはいかず、圭太は寮生活をすることになった。