たった2カ月で変わり果ててしまった義母

話し合い当日、まず驚いたのは幸子の見た目だった。愛実が幸子と最後に会ったのは義父の四十九日の法要だったから、まだ2カ月程度しかたっていない。

幸子はお金が借りられると勘違いしてか浮かれた様子で家にやってきた。

愛実はリビングに通し、そこで優海のことを聞いた。瞬時にお金を貸してくれるわけではないと幸子は悟り、冷めたような目で愛実たちを見た。

その様子に愛実も武敏も困惑する。目の前にいるのは、まるで見た目だけが幸子にそっくりな別人のように思えた。

それでも武敏は思いを伝える。

「母さん、どうしてパチンコなんてやってるんだよ? 俺が何も知らないと思っているのか?」

「……パチンコをして何が悪いのよ? あれは法律違反だったっけ? だったら、営業している店が悪いじゃない」

「そういうことじゃない。別にたしなむ程度にやるのはいいんだ。でも母さんは違うだろ。俺に金を無心して、この間は優海から金を借りようとしたらしいじゃないか」

武敏は深いため息をつく。

「しっかりしてくれよ。もういい年して、ギャンブルにはまるなんて恥ずかしいと思わないのか?」

その瞬間、幸子の目がつり上がった。

「何よ⁉ 私はずーっとしっかりしてたわよ! 夫の介護をずっと一人でしていたのよ! あんたたちは家がこんなに近いのに全然うちに寄りつかなくて、私がずっと一人で頑張っていたんだからね!」

そこから幸子は風船が破裂したように武敏たちに対して不満をぶちまけた。

愛実たちは義父の介護を幸子に任せていた。やったとしても週1ペースで実家に行き、少し顔を出す程度。2人は幸子なら1人で大丈夫だと思っていたが、そんなことはなかった。

幸子の不満に愛実は言い返せなかった。

「それなのにちょっと私が趣味を見つけて楽しんでたら、それも止めるの⁉ じゃあ私は何を楽しみに生きてたら良いの⁉ もう私は用済みってことね⁉ 父さんをみとったら、私みたいな老婆は死ねって言いたいんでしょ⁉」

「いや、ちが」

「そもそもあんたたちは共働きでしょ! お金なんていくらでもあるんだから、ちょっとくらい貸してくれてもいいんじゃないの⁉」

そこから幸子のけんまくに愛実たちは完全に気おされてしまった。2人がかりでなだめるまで幸子は怒りを機関銃のように放ち続けていた。

最終的には武敏は財布にあった2万円を渡して帰ってもらったのだが、それからというもの味を占めた幸子は毎週のようにお金を無心するようになった。