孫にまで金を借りようとした義母

娘の優海は学校帰りにそのまま予備校に行くので、家に帰ってくるのは9時を過ぎてからになる。そのため、家族で食事をすることは少なく、優海1人で夕食を取ることが多い。

その日も愛実は夕食を温めながら、優海の帰りを待っていた。

玄関が開き、リビングに入ってきた優海に声をかける。

「おかえり」

「う、うん、ただいま」

優海の表情が浮かないことに愛実はすぐに気付く。

「何、どうかしたの?」

「……帰りにね、駅前でお婆(ばあ)ちゃんとばったり会ったの」

その瞬間、一気に体温が冷めていくような感覚に陥る。

「え……、何かあったの?」

「そしたらね、お婆(ばあ)ちゃんからお金を貸してほしいって言われて。でも私、そのときお金を持ってなかったから、断ったんだけど……」

断った途端、幸子は冷たく返事をして、どこかに行ってしまったらしい。

愛実は優海の困惑した顔を見ながら、沸々と湧き上がってくる怒りを感じていた。

孫からお金を借りようとするなんて。

風呂から上がってきた武敏に報告すると、さすがに度が過ぎると思ったのか、週末に幸子を呼び出すことに二つ返事でうなずいてくれた。