帰国後に会った母の様子

母は専業主婦でしたが社交的な性格で友人も多く、父の面倒を見ながら自分は自分で生活をエンジョイしているように見えました。しかし、帰国後に会った母はまるで別人でした。かなり痩せたせいか顔色も悪く、髪には白いものが目立ち、葬儀の頃より10歳近く老け込んだ印象を受けました。

夕食時になり「お前も食べていく?」と食事の支度をしてくれたのですが、野菜の煮付けに粕汁という文字通り一汁一菜の質素なもので、それにも驚きました。以前の母は、私が家に帰る度、食べきれないほどの料理をテーブルの上に並べてくれたものだったからです。

明らかに様子がおかしいと感じ、「体の具合が良くないの?」と聞いてみましたが、「そんなことはない。行きつけの病院の先生からも『あなたの年齢で持病もないのは珍しい』と言われるし」と言葉を濁します。

気になったので数日後、母が仲良くしていた隣の山中さんの奥さんに電話をして、それとなく母の暮らしぶりを尋ねてみました。

「お父さんが亡くなるまでは一緒に観劇や買い物に出かけていたけれど、コロナ以降はとんとご無沙汰。それに、加奈さんはお花やお習字の教室もすっぱり止めてしまったから、最近は顔を合わせる機会があまりないの。先週、スーパーで会って立ち話をしたくらいかな」

そんな話を聞かされると、ますます心配になります。