<前編のあらすじ>
幼い頃から母親の支配を受けてきた山口紗理さん。マザコン夫との離婚後、母親の会社を手伝うことになった。ある時、母親の兄嫁いびりが原因で兄が実家を出てしまい戻らなくなった。兄の代わりに跡継ぎとなった山口さんは、「会社の運転資金を借りるため」と母親に指示されるがまま、連帯保証人の欄にサインをしてしまう。
●前編:【指示されるがまま「連帯保証人」の欄にサインを…娘の人生を狂わせた「毒母の支配」】
心の崩壊
母親の会社で働き始めて約20年。ずっと従順ないい子だった山口さんだが、母親に振り回される人生に嫌気が差し始めた。言いつけを守らなくなっていく山口さんにいら立つ母親は他の従業員をいじめ、いじめられた従業員は耐えきれず辞めていく。
従業員に辞められて困るのは穴埋めをする山口さんだった。求人を出して採用するが、母親は「勝手に採用した!」と激怒。採用したばかりの新人をいびり、1週間で追い出してしまう。その新人が辞めた日。ドヤ顔で母親は言った。
「ほら見てごらん、すぐ辞めていったろ? あんたに見る目がないのが分かったか! あんな人を雇った責任はどう取るつもりかね?」
渋々謝罪する山口さんに、母親は畳み掛ける。
「口先だけで謝るのは簡単よ。土下座してもらおうか?」
営業時間中、大通りに面したガラス張りの店の中で、山口さんは土下座した。母親が何も言わないので顔を上げると、母親は笑っていた。顔を上げ、立ち上がろうとした山口さんと目が合った途端、
「あんたかわいいねぇ。抱いてあげる!」
母親は山口さんに抱きついた。
山口さんに、そこからの記憶はない。
「長年、必死で保ち続けていた私の心は、この時に崩壊したのです……」