<前編のあらすじ>

小枝子(35歳)は婚活パーティーで知り合った隆平(40歳)と出会って7カ月で結婚した。一緒に暮らし始めるとすぐに暴力をふるう隆平の本性が明らかになった……。

●前編:出会って7カ月で結婚した夫が激変… 婚活パーティーの“落とし穴”

友達にも言えなくて

少し早く着いて待ち合わせ場所で待っていると、時間ちょうどに和江がやってくる。和江の大きなおなかには、2人目の子供が宿っている。

「ちょっと小枝子、あんたどうしたの!? その顔……」

和江が驚きのあまり目を見開いている。小枝子は白い眼帯がついている顔の右側を髪の毛で隠しながら曖昧にほほ笑む。

「……ちょっと転んだだけ」

「いやいや、そんなになるってどんな転び方したのよ。……もしかして隆平さん?」

和江は昔から勘のいいところがある。小枝子にはもう一度曖昧な笑みを返すしかない。

小枝子の手首を和江がつかみ、カーディガンの袖をまくり上げる。小枝子の身体には1日や2日でついたものとは思えないあざがあった。

「ねえ、小枝子。ちゃんと話して。何されたの」

「大丈夫だから」

小枝子は手首をつかんできた和江の手を振りほどく。

「本当に大丈夫。けが自体は大したことないの。それに私も余計なこと言っちゃったし、彼も仕事が立て込んで疲れてて。だからとにかく大丈夫。……ごめん、今日は私、帰るね」

「ちょっと小枝子!」

呼び止める和江の声を振り切って、小枝子は走りだした。片目がふさがっているせいか人にぶつかった。気をつけろと怒鳴られた。小枝子は何度も頭を下げながら人混みに紛れ、改札まで走った。

電車に揺られていると、和江からLINEが届く。

——追い詰めるように迫っちゃってごめん 私は小枝子の味方だから、それだけは忘れないで

電車のなかだというのに、和江のやさしさに涙が出た。けれど小枝子には何が正しいのか、自分がどうすべきなのかが分からなかった。