嫌がる莉子にお気に入りのハローキティのトレーナーを着せ、ようやく部屋から連れ出したのが10時58分。最上階のキッズルームに到着すると、そこにはもう葵ちゃん母子と愛梨ちゃん母子が待っていた。

葵ちゃんも愛梨ちゃんも莉子と同じ2歳。二人のママとは、莉子が生後6カ月を迎えた頃、ベビーカーを押して出かけた近所の公園で知り合った。葵ちゃんパパは夫と同じ商社に勤務していて今は南米に単身赴任中、愛梨ちゃんパパ(※)は都内の有名病院の消化器外科医だ。

※過去記事:【エリート外科医の大誤算…完璧な人生を狂わせた“たった1つの過ち”】

結果的に私たち三人ともパートナーは家を空けている時間が長く、子供が一番手のかかる時期にワンオペ育児を余儀なくされている。よく似た境遇が、互いの距離をぐんと近づけた。

今は週に3日はこうして公園やキッズルームで子供を遊ばせ、その後は誰かの部屋でランチを取るのが習慣になっている。月に1~2度は葵ちゃんママのボルボで東京ディズニーリゾート(TDR)に遠出をすることもある。

「今日はうちに来ない?  パエリアの準備がしてあるから」

商社の一般職だった葵ちゃんママは、面倒見のいい有能な秘書タイプだ。人気料理家の教室に通っていて、将来は自宅で料理サロンを開くのが夢だという。

「わぁ、楽しみ! 葵ちゃんママのご飯はそこらのレストランよりずっとおいしいものね」

愛梨ちゃんママに同意を求める。

「ホント。食器遣いも素敵だし、開業したらすぐ予約が取れない人気店になっちゃうかも」

元看護師の愛梨ちゃんママは三人の最年長で38歳になるが、エステ通いを欠かさずフラクショナルレーザーを照射した肌は30歳くらいにしか見えない。メイクやファッションも流行を意識したモード系だ。