二人とも品の良い奥様という感じで前に出るタイプではないので、いつの間にか私がグループのまとめ役を務めるようになった。
「さすが、元キャビンアテンダント! 情報通よね」
「莉子ちゃんママは美人でスタイルもいいから読モとかにスカウトされそう」
二人に持ち上げられて悪い気はしなかった。
「聖心女子大からJALなんて典型的な良家のお嬢様コースじゃない」と冷やかされると、実は埼玉県の女子高出身で父親は市役所勤務とは言いにくい。夫の実家がある三鷹市の生まれで、初等科から聖心に通っているという嘘が自然と口を突いて出た。
このマンションに暮らすようになって4年。中層階の部屋はもともと、夫が独身時代から借りていたものだ。海外出張の多い夫とは乗務中に知り合い、付き合うようになった。莉子の妊娠が分かって慌てて籍を入れ、新居を探す間もなく転がり込んだ格好だが、意外に居心地が良かった。