智明さんは妻と未就学児のお子様2人と暮らす会社員。外貨建ての終身保険へ加入していますが、つみたてNISAの運用益を見るうちに、この保険に加入し続ける意味があるのかお悩みになり相談に訪れました。

外貨建て終身保険の加入を続けることに意味があるのか、そしてその浮いたお金でインデックス投資をした方がいいのではないかと考える智明さんの考えには、2つ誤解があるように思います。

●つみたてNISAの運用益を見て、保険継続への迷いが生まれた男性。
※前編【「保険って意味ある…?」つみたてNISAを始めた男性が抱いた疑問】からの続き

①全てのアクティブがインデックスに勝てないという誤解

智明さんのおっしゃる通り、一般的にアクティブはインデックスに勝てないと言われることが多いですが、それは全ての投資信託にあてはまるわけではありません。

金融庁「プログレスレポート」によると…

2023年4月金融庁の「プログレスレポート」では、米国、欧州、日本の各地域の大型株に投資するアクティブ系ファンドについて、コスト控除後のリターンを各地域のベンチマークと比較したところ、3年、5年、10年、どの時間軸でもアクティブファンドに超過リターンがあったそうです。ここで比較したベンチマークは、米国はS&P500、欧州がMSCI ­Europe、日本がTOPIXです。

その勝率は、各地域で大小あるものの、どの時間軸でも日本が一番大きく、そこに欧州、米国と続きます。具体的な勝率は、10年のケースで言うと、日本33.3%、欧州21.3%、米国13.4%。日本のケースで言うと、なんと約3分の1のアクティブファンドがベンチマークのTOPIXを上回っているという結果だったのです。

この結果を受け、プログレスレポートでは、「資産運用会社は、アクティブ運用の拡大に向けて、人事・報酬制度を柔軟化して、国内外の有能な運用人材を集めるとともに、運用事務及び運用以外の事務の効率化・合理化を追求し、運用力強化に注力して頂きたい」と述べられています。

金融庁「投資信託の共通KPIに関する分析」によると…

また、金融庁では投資信託の販売会社を比較できる共通指標、「投資信託の共通KPI」を公表しています。その指標の1つが運用損益別顧客比率で、運用損益が出ている顧客の割合を主要行等部門、証券会社部門、その他事業者部門などに分けて公表しています。

このうち、2022年3月末基準の共通KPI、その他事業者部門を見てみると、平均より上位に位置する会社のうち、つみたてNISAで採用されているファンドを自ら作って運用・販売している会社は、セゾン投信、コモンズ投信、レオス・キャピタルワークス、鎌倉投信であり、いずれの会社のファンドもアクティブ型です。

どの程度の顧客が、運用損益率がプラスであるかと言うと、セゾン投信99.1%、コモンズ投信94%、レオス・キャピタルワークス82.2%、鎌倉投信81.4%。つまり、セゾン投信の場合、顧客の99.1%が、運用損益率がプラスになっているというわけです。

プログレスレポートと共通KPIは内容がリンクしていないため混同されないようにしていただきたいのですが、いずれにしても優秀なアクティブファンドは確実に存在していることが分かります。

それゆえ、初めからインデックスに絞ってアクティブに全く目を向けないことは、大変もったいないと言えるのです。