家賃収入が得られると思いきや…

そして、実際、“敵”は想像以上に手強かったのです。

建て売り住宅メーカーとのやり取りを見ていた不動産会社の担当者が「固定資産税の支払いだけでも大変でしょうから、家賃収入を得ることを考えたらいかがでしょう?」と、区役所と空き家の有効活用を目指したプロジェクトを運営しているNPO(特定非営利活動法人)を紹介してくれました。

NPOの担当者は地方のシャッター商店街再生プロジェクトなどにも関わったことのある大学の研究者でした。イングリッシュガーデンに煉瓦の洋館という実家の立て付けを高く評価し、シェアハウスやデイケア、区の文化施設などさまざまな活用法を提案してくれました。

その中で比較的イニシャルコストもかからないデイケア施設としての活用を本格的に検討していこうとなった矢先、またしてもあの地主一家が干渉してきたのです。

「自治会長さんという方が見えて、『この辺りは昔からの住民が暮らしている閑静な住宅地だから、身元の分からない部外者が毎日出入りするのは困る』とおっしゃるんです」。最初はNPOの担当者も困惑したようでした。しかし、区役所の担当者から“自治会長さん”の素性を聞き、抵抗しても無駄だと察し諦めたようです。

「厄介な相手と関わってしまいましたね。これがうまくいけば区内の空き家活用のベストプラクティスになったかもしれないのに」と言って引き上げていく背中には無念の思いがにじんでいました。