「配偶者の方はいらっしゃらないのですよね?」
退職し、71歳を迎えた篤さんは年金の手続きをしようと思いました。年金事務所に行き、早速、「繰下げをしたいと思ってきたのだけれど、71歳になった今から受け取りを始めるなら、かなり増えそうですよね? 65歳から6年待ったわけだから、確か0.7%×72カ月で50.4%の増額かな?」と窓口の職員に尋ねました。
しかし、職員からは次の質問がありました。「えっと……配偶者の方は現在いらっしゃらないのですよね?」。
篤さん自身の年金の話のはずが、妻の真由子さんのことを尋ねられたので、篤さんは不思議に思います。
「妻? 妻は自分が65歳の時、6年前に他界しています。だから今は1人」と答えました。
「残念ながら繰下げ受給はできないです」
すると、職員は少し動揺したような表情で「篤さん、奥様を亡くされた年の前年の収入はどれくらいでしたか? 850万円以上ありましたか?」と今度は篤さんの年収を突然尋ねます。「自分の収入?? その頃も今も収入850万円より全然低い。妻を亡くした年の前年だと、年収550万円くらいだったかも……。65歳を過ぎてからはもっと少ない」と答えます。
それを聞いた職員は篤さんに「残念ながら繰下げ受給はできないです。それと……年金が時効により一部受け取れない分が発生します」と告げるのでした。
「繰下げできない? 時効で受け取れない?」と篤さんは理解が追いつきません。希望していた繰下げができないだけでなく、時効で受け取れない年金が出てくるとはどういうことなのでしょうか。
●なぜ篤さんは繰下げ受給ができなかったのでしょうか? 後編【「せめて妻を亡くした時点で手続きしておけば…」71歳になって年金の手続きをした男性が悔やんだ「落とし穴」】では、年金受給時に思わぬ落とし穴となる遺族年金の仕組みについて詳しく解説します。
※本記事に登場する人物の名前はすべて仮名です。
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