商店街の仲間たちが訪問
しかし結局何のアイデアも出せないうちに1週間の時が過ぎる。香織は休業中も毎日店を訪れては掃除や厨房の点検などを行っていた。
その日もテーブルを丁寧に拭いていると店のドアを叩く音がした。香織がゆっくりとドアを開くとそこには多田の姿があった。さらにそのうしろには同じく商店街で店を出している人たちもいた。
「ちょっと話したいことがあるんだけど、いいかな?」
多田の申し出に頷き、香織は全員を店の中に入れる。テーブル席で目の前に座った多田がこちらに目を向けてきた。
「ご主人の調子はどう?」
「はい、今はもうすっかり元気になって、今は趣味だった釣りをやってますよ。全然やれてなかったのでとても楽しそうです」
香織の報告に多田は頷く。
「そうか。元気そうで何よりだ」
「……夫のためにわざわざ?」
「まあそれもあるんだが、まず謝りたくてね。本当に申し訳なかった」
多田が頭を下げて、他の人たちも申し訳なさそうな顔をしている。
「え? ど、どうしたんですか?」
「外国人観光客がたくさん来るようになって、その責任を全て香織さんたちに押しつけてしまっていた。それが間違っていたよ」
「……どういうことですか?」
多田は顔を上げて説明を始めた。
「実はこの店が休業した後も外国人観光客は減ることなくこの商店街に来ていたんだ。そしていろいろなところで問題が起き続けていた。私はてっきりこの店が原因だと思っていたが、そういうことではなかったと分かったんだよ」
「そんなことになってたんですね……」
「それでこの問題は我々商店街が一丸となって取り組むべき問題だということが分かった。だから今後どうしていくかの話し合いをしたくて来たんだよ」
多田をはじめとした商店街の人たち全員が味方になってくれる。それは香織にとってこれ以上ないほどに心強かった。何か対策できないかと考えていたのだが、自分たちだけでやれることは大して効果がないと感じていたのだ。
しかし商店街のみんなでやるのであればどうにかなると思えた。
「ありがとうございます。皆さんの力があればきっとこの状況を乗り越えることができると思います。ぜひみんなで力を合わせて頑張りましょう」
香織は強い決意を持って多田たちに言葉をかけた。
