売上増加の裏で疲弊する日々

閉店時間の18時を30分以上過ぎて、ようやく最後のお客が店を出ていくと、香織はのれんを下ろして閉店の看板をドアの前に置いた。

いつものように、店の前には団子の串が無造作に捨ててある。テイクアウトで買った人が外で食べてゴミをその場に捨ててしまっているのだ。香織はため息をつきながら、路上に捨てられたゴミを拾って回った。

店内に戻って扉に鍵をかけると、茂人が厨房から出てくる。

「……今日も終わったな」

茂人は疲れた顔で声をかけてくる。

「お疲れ様。お茶を入れましょうか?」

「ああ、いいよ。香織も疲れてるだろ。ゴミもありがとうな」

そう言って茂人は椅子にどかっと座る。

「これいつまで続くんだろうな……」

茂人はうつむいて独り言のようにつぶやいた。

義父の後を継いで店主になってからは味を絶やさないように頑張っていた。外国人観光客がたくさん来るようになったころは嬉しそうにしていたが、ここ最近は元あった生気を完全に失っているように見えた。

「……そうね。本当に大変よね……」

茂人ほどではないが香織も同じような気持ちだった。

売上は伸びているが幸福度は明らかに下がっていた。

「香織は先に帰っててくれ。俺は明日の仕込みをやってくから」

「わかった……でも毎日毎日大丈夫? 昨日だって、帰ってきたの1時過ぎだったでしょう」

伝統の味を引継ぐ茂人は、日付が変わるくらいまで翌日の準備をし、さらに朝の5時には店に来て餡子やたれの用意をしている。これまでそんなことをする必要はなかったが、観光客が増えて以降、そうでもしなければ追いつかない現実があった。

「まあやるしかないよ。夜中のうちに仕込んでおいても店が開けば、ああなっちゃうしな。少しでも備えておかないと」

団子づくりについてはほとんど手伝えることがない自分が不甲斐ない。昔の地元のお客さんやたまに来る観光客の人たちだけが来ていたときが懐かしかった。