全財産を譲ると言われたが…即答できなかった理由

さらに、稲垣さんは叔母の相続プランについても説明してくれました。

叔母の法定相続人となるのは、亡くなった直樹の一人娘です。相続人が死亡していた場合は、その直系卑属が代わりに相続人となる「代襲相続」という制度があるのです。

しかし、叔母は孫娘ではなく、姪の私に全財産を相続させることを強く望んでいて、その旨、遺言書を作成しておきたいとのことでした。

「専門用語で包括遺贈と言うんですが、遺言によって相続財産を全て茉莉花さんに渡すということです」と、稲垣さん。

「茉莉花にはずっと『私の財産は全部譲るから』と伝えてきたし、遺言書を作ってから報告すればいいんじゃないのって言ったのよ。でも、稲垣さんが『念のため、事前に茉莉花さんのお気持ちも確かめておいた方がいいですよ』って言うから」

叔母が茶目っ気たっぷりに事情を話してくれました。事が事だけに、私にプレッシャーを与えないよう気を遣ってくれたのでしょう。

「で、茉莉花はどう思う?」

何となく心構えはしてきたものの、いざ決断を迫られると即答はできませんでした。金額が大きいだけに責任も感じましたが、それ以上に、相続人である直樹の娘や、奥さんの佑衣さんのことが気になっていたからです。

●叔母と姪の間に漂った微妙な空気――その後、両者が納得する解決策を導き出した司法書士の稲垣さんは、一体どんな提案をしたのでしょうか? 後編【叔母の遺産1億円を全て相続か完全辞退か…究極の二者択一を迫られた55歳姪に、相続の専門家が示した第三の道】で詳説します。

※プライバシー保護のため、事例内容に一部変更を加えています。