1年ぶりに帰省した明彦

12月30日のお昼ごろに明彦が我が家に帰省してきた。

元気そうな顔をしていて恵実は安心する。電話では会話をしているのだがやはり顔を見ないと元気にやってるのかどうか分からない。

「久しぶり。荷物置く前にお父さんに挨拶をしてこないとダメよ」

「はいはい」

明彦はあっさりとした様子でさっさとリビングに行って克寿に挨拶をしていた。お盆もいろいろあって帰ってこなかったので、本当に1年近くぶりの帰宅であるはずなのに、明彦には久々の実家を懐かしむような素振りはまったくない。精神的にも独り立ちしているというのは頼もしいことではあるが、少しだけ寂しさも覚えた。

着替えてからリビングに戻ってきた明彦にお菓子を出し、恵実は仕事の話を訊いた。

明彦は住宅設備のメーカーで営業の仕事をしている。営業にはノルマもあり、楽ではないようだったが、それなりに成果も出し、やりがいも感じられているようだった。しかし――

「でもまあいろいろと大変だね。そもそも家がないとうちの会社は成り立たないから。不景気で家を誰も建てなくなったら俺たちの仕事はなくなっちゃうよね。実際、冬のボーナスも聞いてた話と全然違ったし」

明彦は難しい顔をした。定職に就けたら安泰なんてのは遠い昔の話なのだろう。

すると、年末特番を見ていた克寿が顔を上げ、明彦に言った。

「貯金はしてるのか? お金さえあればどういう事態になっても対応することができるからな」

「いや、貯金は正直あんまりやってないね」

「悪いことは言わないから、貯金しておけ。これから結婚だ、子育てだと金もかかるんだから」