ベトナム移住で見つけた「足るを知る」精神

けれど、価値観というのは、住む場所が変われば驚くほどあっさりと覆るものだということを、私は身をもって体験しました。私の人生の転機となったのは、2018年にベトナムへ移住したことでした。

当時のベトナムは、凄まじい熱気に包まれていました。バイクのクラクション、湿った空気、飛び交う活気ある言葉たち。そこで暮らすうちに、私はあることに気がついたのです。ここでは、誰も私のバッグのブランドなんて気にしていないということを。

私が何を持っていようと、路上のプラスチック椅子で食べる数百円のフォーの味は変わらないし、現地の人々の屈託のない笑顔も変わらない。

「カッコつけなくてもいいんだ」

この事実は、東京で張り詰めていた私の肩の荷を、ふっと降ろしてくれました。

値段が高いから良いのではない。他人が羨むから持つのではない。自分が必要だと思えば買うし、不要なら買わない。そんなシンプルで本質的な価値観を手に入れた時、私は本当の意味で、お金から自由になれた気がしたのです。ベトナムの熱風の中で感じたあの身軽さは、今でも私の人生の大切な財産です。

しかし、「足るを知る」という精神的な充足だけで生きていけるほど、世界は優しくなかったのです。

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