満ち足りた暮らしを送る真子
昼になると、真子は炊き出しに参加をするために近くの公園へと出かけた。
宏明が小学校に入り本格的に手が離れたところでママ友だった加奈子から紹介されて参加をするようになったボランティアだ。多くの人の助けになることをするのがとても気持ちが良く、時間があれば毎回参加するようにしていた。
炊き出しが終わったあとは、お茶をするために加奈子と喫茶店に寄り、夫や子どもの愚痴を聞くのが定番だった。本当は一緒になって話をした方が盛り上がるのだろう。けれど真子には雅樹や宏明に対する愚痴が思いつかなかった。
雅樹と結婚して15年近くになる。どちらも41歳になり、息子の宏明は11歳になった。あっという間の日々だったがとても幸せだったと間違いなく言える。真子は宏明が生まれてから専業主婦として家庭を支え、雅樹は地域の人たちなら聞いたことがあるようなガス会社に勤めていて秋の人事異動でついに課長に昇進をした。おかげで経済的にも恵まれている。宏明の将来のための貯蓄も順調だ。加奈子には言えないが、真子の生活は満ち足りていた。
家計が厳しいと愚痴を言い終わって、加奈子がこちらをじとっとした目で見てくる。
「いいなぁ、星野さんのところは旦那はエリートで稼ぎもいいし」
「いやいや、エリートとかじゃないよ。こないだだって、周りに何年も遅れてようやく昇進したくらいなんだから」
真子はとりあえず否定をする。とはいえ、雅樹が仕事を頑張っているというのはとてもよく理解しているつもりだ。
「十分エリートだよ。いいなぁ」
羨ましがってくれる加奈子に、真子はまんざらでもない様子で微笑んでおいた。
