相続をめぐり兄妹間にも不穏な空気が流れ始める
法定相続分通りに遺産分割をするとなると、異父姉には1億円を受け取る権利があります。しかし、これは到底納得できませんでした。
そもそも、母の3億円の遺産は長谷川家のもので、元はと言えば、祖父が事業を通して成した財産です。それを、いくら母の血のつながった娘とは言え、長谷川家からすれば赤の他人に持っていかれるのはいかにも理不尽です。
問題はそれだけではありません。3億円の遺産の多くは自宅不動産の評価額ですから、仮に異父姉に1億円をキャッシュで渡すとなると、私か妹が自宅を相続する必要が出てきます。
自宅の相続には相続税のほかに登記の費用などもかかり、場合によっては“持ち出し”になる可能性もあります。私も妹も父の相続でそれなりの資産をもらっていますが、それとこれとは別です。
妹は年下でベンチャー起業家の旦那(義弟)が何かと物入りなのに加え、甥の小学校のお受験や入学費用などもそれなりにかかったらしく、父からもらった遺産も半分以上は使い果たしてしまったようでした。
「お兄ちゃんが何とかしてよ! 扶養家族もいないし、お金のかかる趣味があるわけでもないんだから、貯め込んでおいてもいずれ国庫に没収されるだけでしょ?」
一方的な屁理屈で私に厄介ごとを押し付けようとしてきます。
「もらう時だけ平等を主張して、問題が起きればこっち任せはないんじゃないか」
あまりの身勝手さに私の方も理性を失い、危うくけんかになりかけました。そんな兄妹間の不穏な空気を察したのか、税理士さんが「本当に申し訳ないことです。お母様の相続人の確定をしておかなかったのは私の不注意でした」とわびを入れてきました。
「お母様はまだお若く、ご本人もあまり乗り気でなかったので、ご養子の話が持ち上がった時も戸籍の調査を後回しにしてしまいました」
祖父の代からお世話になっている税理士事務所とあって、我が家の事情は知り尽くしています。「異父姉様とお母様との間にどんな事情があったのか分かりませんが、何十年も交流がなかったことを思えば、あまりいい感情は持っていないかもしれません。ひとまず私が様子を見てきましょう」と、異父姉の住所を調べ出し、異父姉に会うためにかなり遠方の地方都市まで足を運んでくれました。
