繰下げ待機期間が生んだ700万円超の未支給年金

雅美さんは働いていることを理由に、65歳から年金を受け取らず、70歳から繰下げ受給するつもりでいたため、亡くなった当時は年金を受給していませんでした。では、どれくらい未支給年金として支給されるのでしょうか。亡くなった当時、繰下げ待機していた場合は65歳開始の繰下げしない額として、65歳となった月の翌月分から亡くなった月分が支給されることになります。

雅美さんは65歳時点での年金は年間200万円程度で、68歳6カ月を迎えて亡くなりました。そのため、未支給年金としては3年6カ月分になります。65歳以降厚生年金に加入して保険料を掛けた分も一部計算に含まれた結果、未支給年金としては合計700万円を超える額になりそうでした。

これを知った絵里香さんは「えぇ! 700万円も? 私が?」「保険料は掛け捨てにならないことにはなるけど、それを私が受け取れるなんて……」と驚きましたが、こちらは相続とは関係なく、未支給年金として絵里香さんが請求できます。絵里香さんは雅美さんに感謝しつつ、そのまま手続きを進めました。

年金を受給していた人が亡くなり、遺族に未支給年金の手続きが発生することはよくあるケースです。多くの場合は既に受給していた中で亡くなるため、未支給年金は1~3カ月分で数十万円程度にとどまることがほとんどです。しかし、年金を受け取る権利がありながら何年も繰下げ待機をしていると、未支給年金は数年分となり、額も数百万円に上ることもあります。未支給年金は亡くなった人に配偶者や子がいなくても対象となることがあるため、亡くなった人についての手続きとして未支給年金の請求は忘れずに進めましょう。

※プライバシー保護のため、事例内容に一部変更を加えています。