<前編のあらすじ>
本社転勤の内示を受け、「一緒に来てくれる?」と夫の佑輔に聞かれた妻の智子は自身の仕事、小さな息子との生活と照らし合わせ、思い悩む。
フルタイムで働く智子にワンオペ育児は不可能であり、家族帯同なら自分の仕事を諦める必要があった。智子が仕事の継続を主張すると、佑輔は妻のキャリアを軽視する暴言を吐く。
この心ない一言に深く傷ついた智子に対し、佑輔は自らの出世を優先する姿勢を崩さず、夫婦間には決定的な溝が生まれてしまう。
●【前編】「結局は娯楽でしょ?」昇進に浮かれた夫の心ない一言…妻の心がズタズタに崩壊した衝撃の夜
夫・佑輔の言葉が胸に突き刺さる
賑やかな昼休みのカフェテリアは、智子の席だけ時間が止まったようだった。
注文したランチセットを前にしても、フォークを手に取る気力すら起きない。心の奥に重しのようなものが沈んでいて、食欲どころではなかった。昨夜の言葉がまだ胸に残っていた。
——「結局は娯楽でしょ?」
思い返すたびに、胸の奥がチクリと痛んだ。でも同時に、わかってもいた。
佑輔がどれだけ努力してきたか。毎晩遅くまで仕事をして、疲れ切って帰ってくる。それでも息子の寝顔を愛おしそうに覗き込み、そっと布団をかけ直す姿を智子は何度も見てきた。今回の本社異動は、彼にとってようやく報われる瞬間なのだ。
「よし……!」
智子は決めた。
とりあえず佑輔を単身赴任に送り出そうと。できる限りの方法で、仕事と育児を両立させればいい。
冷めかけたランチを頬張りながら、スマホで保育園の転園情報を検索した。夜間保育をやっている園、土曜に預かってくれる園……条件を絞ると数はぐんと減る。見つけたとしても、定員オーバーで空きがない。説明会の予定すら埋まっているところもあった。
「……やっぱり、厳しいか」
思わずため息がこぼれる。