<前編のあらすじ>

自ら立ち上げた会社で成功を収めたやり手の経営者である40代の美優は日々仕事に忙殺されながらも、自社の成長に喜びを感じている。彼女は多忙な生活を、自分が望んだ生き方だと確信していた。

しかし、深夜に帰宅すると、夫の輝昭が酒を飲んでおり、そののんびりした態度に苛立ちを覚える。美優は仕事に理解のない夫を冷たく突き放し、自分の成功には相応しくない存在だと考えるようになっていた。

そんな中、出張で家を空けるはずだった輝昭が突然帰宅する。美優が自宅に招いていたのは、会社の部下であり、不倫相手でもある南だった。

●【前編】夫に不満を抱えた経営者妻が選んだのは禁断の果実…その先に待つのは幸せか? 転落の序章か?

明るみになった不倫…

南を家に帰した美優は、輝昭とリビングで向かい合っていた。

輝昭がどういう流れで南と不倫関係になったのかを詳しく聞いてきたので美優は、かいつまんで答えていった。美優の話を輝昭は疲れ切った顔で耳を傾けていた。

「……ずっと俺のことを裏切ってたんだね?」

被害者面している輝昭に対して美優は苛立ちを覚えた。

「だらしないあなたにも原因があるんじゃない?」

「……俺がだらしない?」

「そうよ。いつまでもうだつの上がらない平社員で。それは別にいいわよ。私だってうまくいかないときはあったし。でも、あなたには努力が足りない。家に帰ってきたら、だらだらお酒飲んでるだけ。そんなの、愛想だって尽きるでしょ」

輝昭は肩を落とす。

「それは、ああいうことしていい理由にはならないだろ。それに、俺は昔からこういう人間だよ」

「昔は昔。今は今よ。人ってのは変わるもんなんだから」

美優の言葉に輝昭は頷く。

「……そうだね。君は変わっちゃったんだな」

寂しそうに輝昭はこちらを見つめている。鬱陶しい視線だと美優は思った。言いたいことがあるのに、それを言い出せずにいる。そういうところが嫌いなのだ。

「……それで、そっちはどうしたいの? 起きたことは起きたことなんだから、私たちのこれからの話をしましょうよ」

美優は輝昭を見据える。ここ数分で老け込んでしまったかのように見える輝昭は首を横に振る。

「どうしたいって、そんな簡単に決められるわけないだろ」

「そういうところよ。私が嫌なのは」

優柔不断な輝昭を見ているのもうんざりだった。この無駄な時間が終わってくれれば何でもよかった。

「離婚しましょう。どうせもう無理よ。これ以上、夫婦でい続けるのなんて」

輝昭は何も言わなかった。立ち上がった美優は輝昭の視線を感じながら、寝室へと引き上げていった。