離婚を決めた美優にさらなる悲劇
あれほど面倒で鬱陶しく思っていた結婚生活だったが、たったひと言であっけなく終わりへと向かっていくものだと気づくと、少し拍子抜けする気分だった。美優は輝昭との離婚の手続きを進めながら、変わらず忙しい毎日を過ごしていた。
だが、そんな日々は急展開する。
きっかけは、美優が立ち上げたプライベートブランドのイメージキャラクターを務めていたモデルの熱愛報道だった。
週刊誌によって報じられた写真を見たとき、美優にはモデルの隣で目線を黒く塗られた男性が南であることがすぐに分かった。
離婚が無事に成立したら、2人の関係もきちんとしようと話していた矢先のことだったので、美優は面を食らった。しかし南に連絡を取ろうにも、いつの間にか休職中になっていた南とは連絡がつかなかった。
ネットではモデルの相手男性は誰だとにわかに盛り上がっていて、南があっという間に特定されていた。おまけに南が社長の美優と不倫関係にあったことまでご丁寧に暴露されていた。
会社の誰かがリークしたに違いなかった。けれど犯人を特定することなんて不可能だった。
美優は会社にいる人間全員が自分の敵に見えていた。
もちろん美優が傷つくだけで済むはずもなかった。
会社では緊急の取締役会が招集され、説明責任を求められた。美優の社長解任はもはや仕方のないことだった。
美優は自分でも事態の全貌を把握できないままに、文字通り全てを失ってしまったのだ。