離婚時の年金分割制度、実際にもらえる金額は?

「離婚時の年金分割とは『婚姻期間中の夫婦の厚生年金(共済年金も含む)の標準報酬を分ける』というものです。ざっくり言うと『結婚から離婚までの間で、稼ぎの多かった方は厚生年金の一部を相手にもっていかれる、稼ぎの少なかった方は相手の厚生年金の一部をもらえる』ということです」

すると詩織さんは疑問を口にしました。

「国民年金は分割できないのですか?」

「はい、できません。法律でそう決められているからです。分割できるのは、あくまでも婚姻期間中の厚生年金に限られています」

「もし夫と離婚したら、どのくらいの厚生年金をもらうことができるのでしょうか?」

「詩織様ご夫婦は共働きなので『合意分割』という方法で分割をします。合意分割では、夫婦で話し合いをし、按分割合(どのくらいの割合で分割をするのか)を決めます。なお按分割合は最大で50%となっています」

「つまり、夫の厚生年金の50%がもらえるということでしょうか?」

「話はそう簡単ではありません。年金分割の計算方法は複雑なので、事例で大まかに確認してみましょう」

■事例

仮に婚姻期間中の夫の厚生年金が100万円、妻の厚生年金が60万円だったとします。

2人の厚生年金の合計は100万円+60万円=160万円。

按分割合を50%とすると、160万円×50%=80万円となります。

離婚分割により、夫は20万円の厚生年金が減ります(100万円-20万円=80万円)。

一方、妻は20万円の厚生年金が増えます(60万円+20万円=80万円)。

※本来は婚姻期間中の標準報酬を分割するので、上記のような方法で分割するわけではありません。この事例計算はあくまでもイメージです。

詩織さんはさらに質問をしてきました。

「私の場合に当てはめると、どのくらいの厚生年金がもらえるのでしょうか?」

そこで筆者は詩織さんから聞き取りをし、次のような条件で概算することにしました。

・婚姻期間は3年とする(結婚から離婚まで3年とする)
・婚姻期間中の平均年収は次の通り
 詩織さん 300万円、夫 450万円
・按分割合は50%とする

「この条件で概算すると、年金分割により詩織さんはご主人から年額で約1万2000円の厚生年金をもらうことができます」 

「えっ! そんなに少ないのですか?」

詩織さんは驚きのあまり、思わず声が大きくなりました。