母のタイミングの良い介護施設入居も妹のおかげ
父は60歳で定年を迎えるまで、区役所に勤務していました。母はパートなどで働いていた時期もありましたが、基本的には専業主婦です。今の家は役所の斡旋で父が30代の頃に購入し、定年時にはローンも完済しています。
父の時代の公務員は恵まれていて、父は20年近く前に2500万円以上の退職金を手にし、今は月額で25万円の年金を受給しています。しかし、蓄財にはあまり熱心でなく、現役時代から好きなバイクや山登りにお金を使っていました。定年後は旅行好きな母と何度か海外にも出かけています。
一方、妹は都内の大学に進学しましたが就活に失敗し、実家に両親と同居してフリーランスで添乗の仕事をしていました。私たちはいわゆる氷河期世代で、妹が希望していた旅行業界はほとんど求人がなかったのです。
住宅ローンや私立に通う2人の子供の教育費に汲々としている私と比べれば、シングルで家賃も要らない妹はいいご身分だなという思いがずっとありました。しかし、母が倒れたのはコロナ禍だったこともあり、不幸中の幸いというべきか妹には仕事のオファーがなく、妹が父に代わって母の介護を主導してくれました。
母が初期治療を終えた後にタイミング良く365日24時間体制の介護施設に入居できたのも、妹が知り合いの介護関係者などを通じて施設探しをしてくれたおかげです。母のことに関しては、私があまり役に立てなかったこともあり、妹には頭が上がりません。
そうした中で、父が突然、家の財産や自分の相続に関する話を始めたのです。親しくしている元同僚から税理士さんを紹介してもらったとかで、遺言書を作成するために私たちの意向を確認したかったのだそうです。