一方、アメリカの経済の先行きに対する懸念はあります。例えば、カンファレンスボードが公表している景気先行指数(青い線)の低下が続いています。これまでの経験則では景気先行指数が低下し始めてから半年から一年程度で景気後退に陥るとされ、景気の先行きに対する懸念は残ります(13ページ)。
ただ重要なのは、どの項目が景気先行指数の低下に影響しているのか、です。そこで内訳をみてみますと、6月分および6月までの6カ月間のいずれにおいても、消費者ビジネス期待指数と新規受注指数が景気先行指数を押し下げています。これらはいずれも先行き不透明感を反映したものと言え、トランプ政権の関税をめぐる不透明感が影響していると考えられます。
それだけに、逆に言えば、米中間の関税交渉の着地が見えてくれば、先行き不透明感の後退によってこれら二つの項目のマイナスインパクトが解消し、景気先行指数の低下にも歯止めがかかってくる可能性が十分にあります(14ページ)。
著者情報
内田稔
うちだみのり
高千穂大学 教授/FDAlco 外国為替アナリスト
1993年慶應義塾大学法学部政治学科を卒業後、東京銀行(現、三菱UFJ銀行)入行。マーケット業務を歴任し、2007年より外国為替のリサーチを担当。2011年4月からチーフアナリストとしてハウスビューの策定を統括。J-Money誌(旧ユーロマネー誌日本語版)の東京外国為替市場調査では、2013年より9年連続アナリスト個人ランキング部門第1位。2022年4月より高千穂大学に転じ、国際金融論や専門ゼミを担当。また、株式会社FDAlcoの為替アナリストとして為替市場の調査や分析といった実務を継続する傍らロイターコラム「外国為替フォーラム」、テレビ東京「ニュースモーニングサテライト」、News Picks等でも情報発信中。そのほか公益財団法人国際通貨研究所客員研究員、証券アナリストジャーナル編集委員会委員も兼任。日本証券アナリスト協会検定会員、日本テクニカルアナリスト協会認定アナリスト、国際公認投資アナリスト、日本金融学会会員、日本ファイナンス学会会員、経済学修士(京都産業大学)
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