各販売会社が公開するデータをもとに、編集部独自の分析で投資信託の売れ筋を考察する連載。今回は、楽天証券のデータをもとに解説。
楽天証券の投信売れ筋ランキングの2025年9月のトップ3は前月と同じになった。「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」をトップに、第2位は「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」(愛称:オルカン)、第3位は「楽天・プラス・S&P500インデックス・ファンド」だった。第4位には前月の第6位から「iFreeNEXT FANG+インデックス」が上がり、前月第4位の「楽天・全米株式インデックス・ファンド」は第6位にまで後退した。そして、トップ10圏外から「WCM 世界成長株厳選ファンド(予想分配金提示型)」が第8位にランクインした。
「FANG+」の勢いは続くのか?
楽天証券の売れ筋ランキングの上位で9月に評価を高めたのは「iFreeNEXT FANG+インデックス」だった。同ファンドは、「FAANMG(Meta Platforms、Apple、Amazon、Netflix、Microsoft、Google)」の6銘柄を組み入れ、加えて、「時価総額(35%)」、「1⽇平均売買⾼(35%)」、「直近12カ⽉株価売上⾼倍率(15%)」、「直近12カ⽉売上⾼成⻑率(15%)」でランキングした上位4銘柄を加えた10銘柄で構成される指数に連動する成果をめざす。次世代テクノロジーをベースに、現代社会において人々の生活に大きな影響力を持ち、高い知名度を有する米国の代表的な企業で構成されている。9月末時点での追加4銘柄は、NVIDIA、BROADCOM、SERVICENOW、CROWDSTRIKEだ。これら銘柄群はAI関連でもあり、2023年から24年にかけて人気化し、割高な水準にあると警戒されてきた銘柄群ともいえる。
一方で、割高と警戒されつつも「FANG+」構成銘柄の株高はすさまじく、同ファンドの基準価額も他のインデックスファンドを大きく上回る水準になっている。たとえば、2023年12月末を基準として2024年1月以降の基準価額の推移を比較すると、2025年9月末時点で「iFreeNEXT FANG+インデックス」は92.40%高となり、これは「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の48.98%高、「楽天・全米株式インデックス・ファンド」の46.72%高、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の45.51%高のほぼ2倍に相当するパフォーマンスだ。これだけ差がついてしまうと、他のインデックスファンドの追随は難しいだろう。
もちろん、上昇局面で大きな値上がりを演じてきた「iFreeNEXT FANG+インデックス」は、株式市場が下落に転じる局面では大きく下落する傾向がある。2024年1月から2025年9月末までの期間だけでも、2024年8月、2025年4月に2回の下落局面を経験してきた。この2回に関しては数カ月の期間でその前の高値を奪還する急速な戻り相場になったが、下落局面が、いつもこのように短期で回復するとは限らない。場合によっては3年、5年など年単位で低迷することもある。すでに史上最高値圏にある「iFreeNEXT FANG+インデックス」にこれから投資していくとすると、株式市場の変調について常に警戒していくことになる。大きな上昇率がありながらトップの人気を得られない理由の一つが、この価格変動率の大きさにある。