投資信託の共通KPIで運用損益が「見える化」
投資信託は金融機関によって取り扱いのラインアップが異なる。個人投資家の中には運用成績の良い商品を取りそろえる金融機関がどこなのかを知りたい人もいるだろう。
各金融機関の顧客が投資信託でどれだけ損失を出しているのか、あるいは収益をあげているのか。それが分かる指標が投資信託の共通KPIだ。金融庁が2025年9月10日に発表した最新結果を参考にしてみよう。
投資信託の共通KPIには主に以下の3つがある。
1. 運用損益別顧客比率…投資信託を保有している顧客が購入時からどれくらいのリターンを得ているか
2. 投資信託の預り残高上位20銘柄のコスト・リターン…金融機関ごとの預かり資産残高トップ20銘柄のコスト(※1)とトータルリターン(※2)の関係
3. 投資信託の預り残高上位20銘柄のリスク・リターン…金融機関ごとの預かり資産残高トップ20銘柄のリスク(価格変動の大きさ、※3)とトータルリターンの関係
※1 販売手数料率の5分の1と信託報酬率の合計値 ※2 過去5年間の基準価額の月次騰落率の年率換算 ※3 過去5年間の基準価額の月次騰落率のばらつき
これらの指標によって金融機関ごとに取り扱っている投資信託のパフォーマンスや投資効率などが比較しやすくなる。
投資信託の運用損益別顧客比率―プラスリターンの顧客は1年前より減
投資信託を運用する顧客の損益は1年前と比較してどう変わったのか。調査結果を見てみよう。
投資信託の運用損益別顧客比率
直近の結果は上右図であり、各業態の顧客が持っている投資信託の損益を表している(25年3月末時点)。上左図の1年前と比較すると、どの業態でも赤色系の帯が目立つようになったことが分かる。これは運用損益がマイナスになった顧客の割合が増えたことを示している。
全体では損益がプラスの顧客は71.8%となっており、1年前の91.7%から約20ポイントも減少したことになる。業態別で見ると次のとおりだ。
<業態別>投資信託の運用損益別顧客比率
・投資運用業者:82.4%(前回:90.0%)
・主要行等:77.8%(同89.7%)
・その他(保険会社等、IFA、日本郵便):77.1%(同96.3%)
・地域銀行:72.6%(同91.9%)
・証券会社:69.8%(同89.2%)
・協同組織金融機関等:67.6%(同94.7%)
出所:金融庁「投資信託の共通KPIに関する分析」よりFinasee編集部作成
全ての業態で前年と比較してプラスリターンの顧客比率が低下しており、また業態間の差も拡大している。この背景には24年から25年にかけての市場環境の悪化があると考えられる。
25年3月末はちょうどトランプ関税の動向に世界中がほんろうされていた時期と重なる。一方で24年3月末は前年秋ごろから続く相場の上げ調子の時期に合致する。日経平均株価が史上初の4万円台を突破したのが同年3月4日だった。これらの要因から1年前と比較して大きく差が開いたと推測される。