残高上位20銘柄の傾向は「コスト減少、リターン増加」
続いて、投資信託預り残高上位20銘柄のコストとリターンも見ていこう。金融機関全体の平均値としては調査時点の1年前と比較してコストは小幅に低下しつつ、リターンは上昇している。つまりコスト対リターンの効率が良くなっている。
コストとリターン(全公表事業者)
これは投資信託の手数料の引き下げが進む一方で、パフォーマンスの良い商品が増加したことを示唆している。
なお業態別の差も見られ、リターンやコスト効率において金融機関ごとの特色が表れている。業態の違いは上図内にプロットされた丸の色で分かる。例えば青色の地域銀行は比較的、全体平均の周辺にまとまっている。一方で、茶色の証券会社は特に企業間のばらつきが大きいことが見て取れる。
残高上位20銘柄は「リスク低下・リターン上昇」へ好転
同様に投資信託預り残高上位20銘柄のリスクとリターンの調査時点での結果を見てみよう。金融機関全体の平均値を前年比でみると、リターンは上昇しつつリスクは低下している傾向が見られる。これは投資効率、つまりリスクに対するリターンが向上していることを意味する。
リスクとリターン(全公表事業者)
この結果は投資家にとって同じリスクでより高いリターンが期待できる商品が増えていることを意味する。
顧客の運用状況は悪化も、株高傾向で改善に期待
最新の投資信託の共通KPIに関する分析結果からは運用損益が前年比プラスの顧客の割合が大きく減少したことが分かった。これは市場環境の悪化が主な要因と考えられる。
一方で、預かり残高上位20銘柄のコスト・リターン比率とリスク・リターン比率はともに改善している。
投資家としては、一時的な市場環境の悪化に惑わされることなく、長期的な視点で商品を選ぶことが重要だ。共通KPIを活用して、コストやリスクに見合ったリターンをあげている投資信託をそろえる金融機関を見極めることが資産形成の第一歩につながるだろう。
なお、これらの指標は調査時点での状況を示すものであり、時系列で継続的に見ていくことで、より正確な判断材料となる。
●具体的にどの金融機関の顧客の損益が好調だったのか? 後編「銀行ランキング 投資信託の「運用損益」プラスの顧客の割合は?【主要15行&地銀90行】」にて詳報する。
概要:投資信託の共通KPIに関する分析 <2025年3月末基準>(金融庁) 公表日:2025年9月10日