五十嵐愛子さん(仮名)は新潟県内の農家の跡取り娘。農協に勤務していた夫と結婚し、両親の手伝いをしています。棚田で農薬や肥料を極力使わず栽培している五十嵐さんの家の米は近年、飲食店や食通の個人客からの引き合いが多くなり、収入も安定していました。ですから、昨今の“令和の米騒動”には猛烈に腹が立つそうです。「農家が地道な努力をしているのに、流通がおかしな介入をすることで今回みたいなことが起こる。国にはむしろ、そういう部分にメスを入れてほしい」と話します。

実は五十嵐さんには、米騒動絡みでもう1つ、許せないことがありました。弟の妻である義妹が取った行動です。義妹は人の良い母に頼み込み、無償で少なからぬ米を送らせていました。そして、五十嵐さん宅にかかってきたある電話で、義妹のとんでもない目論見が判明したのです。怒りにかられた五十嵐さんはどうしたのか。五十嵐さんに事の顛末を聞きました。

〈五十嵐愛子さんプロフィール〉

新潟県在住
36歳
女性
自営業(米農家)
両親、夫、小学生の子供2人と6人家族
金融資産5500万円(世帯)

思いがけず農家の後継ぎに…弟は外資系金融機関へ

我が家は代々、家族で米農家を営んでいます。ここ10年ほどは棚田を利用した伝統的な農法で栽培した米が評価してもらえるようになり、事業店や個人のお客様との取引が増えて、収入も安定するようになりました。

丹精込めて育てた米が「おいしい」、「農薬や肥料に頼らず栽培しているのはすごい」と褒められると、長時間にわたる肉体労働も多少は苦にならなくなります。やはり天候の影響は大きく、毎年、水不足や収穫期の台風などに気をもんでばかりですが、自然を相手にした仕事なので仕方がないと思うようにしています。

私は長女で、年子の弟がいます。子供の頃は弟が父の後継者になるものとばかり思っていました。ところが、弟はそれほど熱心に勉強しているように見えないのに学校の成績が良く、担任や進路指導の先生の勧めもあって県内きっての進学校に入り、そこから東京の有名国立大学に進みました。大学を卒業後は東京の金融機関に就職し、アメリカの大学院への留学を経て、今は外資系金融機関で働いています。

そのため思いがけず農家の後継ぎとなったわけですが、私は弟と違って頭を動かすより体を動かす方が性に合い、子供の頃から家の手伝いもよくしていたので、それほど抵抗はありませんでした。10年前には地元の農協に勤務していた夫と結婚し、今は夫婦で両親の仕事を補助しています。弟も、人手が足りない田植えや稲刈りの時には休暇を取って手伝いに来てくれるなど気を遣ってくれています。