出迎えたのは……
雅史の実家に着いた瞬間、春美は思わず小さく息を飲んだ。白が基調の広々とした玄関に、季節の花が上品に活けられている。春美は、自分の選んだ飾り気のないワンピースと、シンプルなまとめ髪が急に恥ずかしくなった。
「あら、いらっしゃい」
そわそわと落ち着かない春美を出迎えてくれたのは、雅史の母、芙美子だった。とても還暦を過ぎているとは思えない、きゅっと引き締まった体に、ぴったりとしたシルエットの美しいワンピースをまとい、余裕のある笑みを浮かべていた。元ファッションデザイナーというのも納得だ。
「初めまして、西野春美と申します。本日はお時間をいただき、ありがとうございます」
春美は気後れしながらも深く頭を下げた。芙美子は、軽くうなずきながら春美を観察するように目を細めた。
「まあまあ、お気軽に。どうぞ、上がってちょうだい」
言葉は柔らかい。だが、その視線には、どこか突き刺さるような鋭さがあった。リビングに通されると、今度は雅史の父と対面した。すらっと背が高く、いかにも紳士的な人物だ。洗練された彼らの前で、春美は出された上品なお茶菓子に手を伸ばすタイミングさえ、緊張でうまく掴めない。
「春美さん、お仕事は何をなさっているの?」
「はい、都内で事務職をしています。今は在宅勤務も多くて……」
「ふうん、そうなのね」
芙美子は微笑みながら、春美の全身をちらりと見た。
「おうち時間が長いと、どうしても……ね。ふふ、体型の維持が難しいでしょう?」