前時代的な価値観と新世代の風

甥の入学祝いにしても、私たちは小学校、中学校入学に際し、それぞれ5万円を包んで持っていきました。そもそも、生まれた時の出産祝いから、お宮参りや七五三のお祝い、毎年のお年玉など、これまでの甥関連の支出は総額で50万円近くに上っています。にもかかわらず、それに対する返礼、いわゆる内祝いは一切ありません。

一方、私たちには甥より3歳下の娘がいますが、義両親は別として、義兄夫婦から入学祝いやお年玉をもらったことは一度もありません。

義兄夫婦はケチなのではなく、分家ふぜいにそんな心遣いをする必要はないと考えているのです。

だとしても、私たちには義弟夫婦のように義兄夫婦に真っ向から立ち向かうなんて真似は到底できません。夫は3人きょうだいの中でも一番穏やかで争いごとを嫌うタイプ。ある意味、義両親のDNAを最も強く受け継いでいます。かく言う私も、自分の意見をはっきり言えず、ストレスを内に貯め込む性格。私たちは似た者夫婦なのです。

先々に思いを巡らせどんよりした気持ちで帰宅すると、娘が満面の笑顔で出迎えてくれました。そして、スマートフォンの画面を見せ、「叔母ちゃんが入学祝いをくれた」と言うではありませんか。

義妹からでした。そこには、「中学校入学おめでとう!!!部活楽しみだね」というメッセージがついていました。送金された金額は甥と同じ5000円でした。

その時ふと思ったのが、「義姉はどうしてこれを不快と感じたのだろう」ということでした。私には不快どころか、とてもうれしいプレゼントだったからです。娘も同じ思いなのはうきうきした表情からも明らかです。

「お母さん、このお金、あたしが使っていいよね? 中学で使うハンカチとポーチ買うから」という娘に「ちゃんとお礼したの?」と尋ねると、「とっくだよ」という答えが返ってきました。「叔母ちゃんと、『今度一緒にコナンの映画見に行こうね』って約束した」

誰に対してもフラットでいられる義妹が心からうらやましく思えました。そんな義妹からは、義兄夫婦を嫌悪する私たちもまた前時代的な価値観にがちがちに縛られているように見えているのだろうなと少々寂しく感じた次第です。

※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。