5000円の送金が引き起こしたガチバトル
そんな義姉と義妹がガチバトルに発展したのが、甥の高校の入学祝いを巡る騒動でした。
成績優秀の甥は今春地元の有名な進学校に合格したのですが、その際、義妹は送金アプリで甥に直接入学祝いを送ったようです。友達感覚のメッセージをつけて、金額は5000円だったそうです。
今どきと言えば今どきで、さすがZ世代です。5000円という金額も平均よりは少ないかもしれませんが、世間常識からかけ離れたものとは思えません。
しかし、前世紀の遺物のような価値観を持つ義姉にとっては「ちゃんと祝儀袋に入れて私たちのところに持ってくるのが筋」であり、義妹の行動は「あまりに非常識すぎて何と言ったらいいのか分からない」ものだったようです。
義姉は最初私に怒りをぶつけてきたのですが、それだけでは収まらなかったらしく、今度は義兄が義弟に電話をかけて延々と説教をしたと聞きました。それを横で聞いていた義妹もさすがに黙っていられなかったのでしょう。義姉に直電をして「私の入学祝いのどこがいけないんですか? 皆やってますけど」と抗議し、義姉がそれに「あなたは目上の人に対する礼儀というものを知らないの?」と応じ、2人は電話で1時間近く怒鳴り合いを続けたのでした。
「何だか、怖くなっちゃった」とは、その一部始終を見届けた義母の言葉です。しかし、義両親が義兄や義姉に意見することはありませんでした。結果的に、義妹は義兄から「二度とうちの敷居をまたぐな」と言い渡されたそうです。
私たち夫婦はその翌週、私が会社の近くの老舗書画用品店で購入した立派な水引のついた祝儀袋に10万円を入れて、夫の実家にお祝いに行きました。義姉のご機嫌を損ねないよう、義姉の好物の老舗洋菓子店のクッキーも手土産に持参しました。
義兄夫婦は私たちの対応に満足したようで、義姉がとっておきのコーヒーを淹れるなど滅多にないもてなしを受けました。とはいえ、義兄から「祐介(夫の名前)が常識人で良かったよ。康介(義弟)は子供の頃からどこかタガが外れていたから、あんな嫁を連れてくるんだ」と言われても返事のしようがなかったのですが。
帰りの電車の中で、夫が口惜しそうに言いました。
「内心、康介夫婦の大逆転勝利を期待していたんだけど、そうはならなかったな。父さんも母さんも、兄さんや義姉さんには面倒を見てもらっている負い目があるから何も言えないんだよ」
私も全く同感でした。当面、義兄夫婦の強権支配が続くと思うと正直うんざりです。この先も甥が大学に進学したり、就職したりした時にはそれなりの対応をしなければならないのかと思うと気が遠くなりそうです。