明るいフィリピン人の女性が

「はじめまして! アンヘル・ディアス・オカンポです! アンヘルと呼んでください!」
4月の新年度初日、溌剌と挨拶をしたのは明るい笑顔の女性だった。

肩まで伸びた黒髪に、はっきりとした目鼻立ち。颯爽とした雰囲気を持ちながらも、どこか親しみやすさがある。 

「どうぞ、よろしくお願いします!」

流暢な日本語だった。それもそのはずで、本社から送られてきている履歴書によれば彼女は英語とスペイン語と日本語のトリリンガルだという。

泰司が少し驚いた顔をしていると、彼女はにこっと笑った。

「子どものころから日本好きで、日本語、長く勉強してました。でも、まだ間違えることもあるかもしれないです」

「いや、十分すぎるくらいだ。今は忙しい時期だから、手取り足取り業務を教える暇はない。即戦力として期待しているから、自分で見て学んでいってくれ」

泰司が言うと、彼女は「わかりました」と元気よく頷いた。

通達があったときの泰司の心配をよそに、アンヘルはすぐに職場にも子どもたちにも馴染んだ。

物覚えも早いアンヘルはルーティンワークのような基本的な業務はすぐに覚えたし、彼女の明るい性格と柔らかい話し方は、小学生たちにとってとても親しみやすかったようで、数日経てば彼女は子どもたちの人気者になった。

教え方も上手かった。泰司の「鍛錬型」とは真逆だが、褒めて伸ばすスタイルで、子どもたちのやる気を上手く促していた。

「岡部、お前も見習えよ」

泰司は冗談めかして岡部に言うと、彼は苦笑いを浮かべた。

「そんな、僕には無理ですよ……」
たしかに、岡部は仕事が遅く、不器用だ。だが、真面目さだけは買える。とはいえ、こうも差があると、つい比べてしまうのも仕方のないことだった。それだけ泰司が岡部に期待しているということだったが、最近の若いやつらに、そういう熱意が伝わっているのかもよく分からない。

「まあ、できることをひとつずつやっていけ」

泰司はそう言って肩を叩いたが、岡部の表情は少し沈んでいた。