1カ月後の総会で恐るべき大逆転劇が…
これに慌てふためいたのが会計担当理事の井畑さんです。
「訴訟なんて費用もかかるし、そもそも、そんな大ごとにする必要があるんですか?」
「管理費未納問題に対して法的手段を採ったケースは幾つもありますよ。そもそも、管理組合として何らかのアクションを起こしておかないと強制執行もできないはずです」
中村さんの対応は冷静で論理的なものでしたが、井畑さんは感情的になり、「強制執行?あり得ない! 訴えるって誰を訴えるんですか? まさか、津島さんのお兄さん?」と声を上ずらせます。
「訴訟の対象になるのはオーナーでしょうね」と中村さんが言うと、井畑さんは「そんな大事なこと、私たちだけで決めるわけにはいきませんよね? 他の住民の方々の意見も聞いてみてください」と食ってかかってきました。
マンションの規約上は理事会決議に基づく提訴が可能だったのですが、井畑さんが強硬に主張して、総会を開催することになりました。
そしておよそ1カ月後に開かれた総会で、私たちは恐るべき大逆転劇を目にすることになったのです。
予兆はありました。最初の理事会から1週間もたたないうちにマンション内のもう1人の友人、桑原さんからランチに誘われました。その席で、「津島さんの件、あまり事を荒立てない方がいいと思うよ」とやんわり釘を刺されたのです。
これは何かあるな、と思いました。
案の定、総会には全12戸中9戸が出席。反対7票で管理費未納の請求に関する提訴はあっさり否決されました。驚いたのは、桑原さんも反対に票を投じていたことでした。
この一件以降、私たち仲良しグループの関係も微妙になりました。誰かの誕生日にはホームパーティーを開いたり、レストランの個室を借り切ったりしてお祝いしていたのに、全く声がかからなくなりました。
マンション内や出先のスーパーなどで顔を合わせれば話はしますが、それだけです。夫も不穏な雰囲気を察したようで、「桑原さんや中村さんとけんかでもしたの?」と真顔で聞いてきたくらいです。