◆「アメリカの星」が輝きを増す?
11月に売れ筋トップ10の第10位にランクインし、12月には第8位にランクを上げた「JPモルガン・アメリカ成長株ファンド(為替ヘッジなし、年1回決算型)<アメリカの星>」は、米国最大の金融グループであるJPモルガン・チェース・アンド・カンパニーの運用部門が厳選する米国の成長株に投資するファンドだ。米国の大型グロース株投資戦略は、その運用ポートフォリオの中身が「S&P500」に似てしまうが、その中から、JPモルガンの判断で成長力に乏しいと判断される企業を除外し、また、より高い成長が期待できると確信度が高い銘柄には資産の配分比率を高くするなどの調整を行うことで株価指数を上回る運用成績をめざす。
実際にファンドの月報によって組み入れ上位銘柄をみると、「エヌビディア」9.3%、「マイクロソフト」9.2%、「アマゾン・ドット・コム」6.2%、「メタ・プラットフォームズ」6.1%、「イーライリリー」5.0%、「アップル」4.9%、「アルファベット」4.7%、「ネットフリックス」3.1%、「マスターカード」3.0%、「ブロードコム」2.3%となっている(2024年10月末時点)。これは同時点の「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」の組み入れ上位の「アップル」7.0%、「エヌビディア」6.9%、「マイクロソフト」6.5%、「アマゾン・ドット・コム」3.6%、「メタ・プラットフォームズ」2.6%、「アルファベット」3.8%、「バークシャー・ハザウェイ」1.7%、「ブロードコム」1.7%、「テスラ」1.4%と比較すると、その違いがよくわかる。「JPモルガン・アメリカ成長株ファンド」は、「S&P500」ではトップの「アップル」の評価が低く、「バークシャー・ハザウェイ」「テスラ」はトップ10に入れていない。また、「S&P500」ではトップ10に入っていない「イーラーリリー」や「ネットフリックス」「マスターカード」を高く評価している。
そもそも「S&P500」は約500銘柄を組み入れた指数であることに対し、「JPモルガン・アメリカ成長株ファンド」では67銘柄に厳選している。この銘柄選定の効果がパフォーマンスに表れているかどうかは、運用会社の銘柄選定能力の良しあしに直結している。過去3年間のトータルリターンでは「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」は77.4%で「JPモルガン・アメリカ成長株ファンド」の71.2%を上回っているが、過去1年間では36.7%に対して40.4%で「JPモルガン・アメリカ成長株ファンド」が勝っている。過去3年は市場全体が大きく上昇したため銘柄選定の効果が表れにくかったが、過去1年は米国株の割高懸念が強く意識されるようになったため、選別投資の効果が表れやすくなったのだろうか。「JPモルガン・アメリカ成長株ファンド」が人気化しているのは、パフォーマンスの変化も考慮された結果と考えられる。
執筆/ライター・記者 徳永 浩