各販売会社が公開するデータをもとに、編集部独自の分析で投資信託の売れ筋を考察する連載。今回は、八十二銀行の6月のデータをもとに解説。
八十二銀行の投信売れ筋ランキング(店頭販売件数)の2025年6月のトップは前月に続いて「セゾン・グローバルバランスファンド」だった。第2位には前月第3位から「ゴールド・ファンド(為替ヘッジなし)」が上がり、前月第2位だった「次世代米国代表株ファンド<愛称:メジャー・リーダー>」は第3位に後退した。また、前月は第8位だった「セゾン資産形成の達人ファンド」が第5位に上がり、前月第10位だった「ダイワ高配当日本株投信(季節点描)」が第8位に上がった。そして、トップ10圏外から「インデックスファンドNASDAQ100(アメリカ株式)」が第10位にランクインした。一方、「三菱UFJ インデックス225オープン」は前月の第6位から第9位に順位を落とした。
「グローバルバランス」と「資産形成の達人」の推移
八十二銀行の売れ筋トップになっている「セゾン・グローバルバランスファンド」は、基本的な配分比率を株式50・債券50のバランス型として、株式と債券については各地域の株式および債券市場の時価総額(規模)を勘案して決定した配分比率で分散投資する。投資手段として低コストのインデックスファンドを使うことでファンドの信託報酬の水準も抑えた作りにしている。一方、「セゾン資産形成の達人ファンド」は、株式100%のファンドながら、投資地域の分散において、各国の代表的なアクティブファンドを選定してポートフォリオを組んでいる。
2024年1月以来の基準価額の推移をみると、2024年7月頃までは株式ファンドの「セゾン資産形成の達人ファンド」が「セゾン・グローバルバランスファンド」に優位な展開だったものが、2024年8月に株式市場が大きく下落した後はほぼ横並びの推移となり、2025年4月に再び株価が急落した後は「セゾン・グローバルバランスファンド」の方が優位な展開に変わっている。「セゾン・グローバルバランスファンド」は株式50・債券50というオーソドックスなバランス型ファンドだが、株式市場が短期間に大きく崩れることを繰り返すような不安定な市場にあって、株式ファンドを上回る成績を残していることに注目したい。
一方、売れ筋上位にある株式ファンドの中では、成長力の高いロボティクス関連企業に選別投資する「グローバル・ロボティクス株式ファンド」が2024年7月までは非常に良いパフォーマンスとなった。ところが、2024年8月の急落でパフォーマンスが悪化し、2025年4月の下落では一段と大きく下落したことで、2024年1月の水準を下回って下げてしまった。また、「次世代米国代表株ファンド<愛称:メジャー・リーダー>」は、次の米国をけん引するような代表的な大型企業30社程度に厳選投資するファンドだが、2024年8月の急落後に頭角を現している。2024年11月の米大統領選でトランプ氏が勝利し、「米国第一主義」を掲げて新しい時代が始まるという流れで評価された。
「グローバル・ロボティクス株式ファンド」はロボット技術にAIが組み込まれることでより効率的で有能なロボットの開発が期待されるなど、ここ数年の成長企業のトレンドであるAI関連の側面もあり、決して終わったテーマではないのだが、2024年までに割高に買われ過ぎた部分の調整が必要だったのだろう。半面で「次世代米国代表株ファンド」は、今後の米国経済が景気後退に陥らないかどうかということによってもパフォーマンスが左右されることがあるだろう。ともに、7月22日までに昨年来の高値を更新していないだけに、どちらがこれからの主役になり得るのか見極めるのが難しい局面を迎えている。