何かとストレスの多い時代。会社員の方が精神疾患を発症してしまい、フルタイムで働くことが難しくなってしまうケースも多く見受けられます。もし一家の大黒柱が病気で働けなくなってしまったら、生活再建に向けてどのような制度を活用することになるのでしょうか。

家計破たんの危機に陥った30代の子持ち夫婦

「このままでは家計が破たんしてしまうかもしれません。まさかわが家がこのようになるなんて、考えてもみませんでした……」

面談で妻はそのように言いました。

これはただ事ではない。そう感じた筆者は、まず状況を整理するところから始めました。

■家族構成
夫 本間洋介さん 36歳 休職中
妻 35歳 パート
長女 4歳

■収入(月額)
夫 洋介さん 傷病手当金 25万円
妻 パート収入 5万円
児童手当 1万円
合計 31万円

■支出(月額)
基本生活費 24万円
住居費(家賃および管理費など) 8万5000円
合計 32万5000円
※一時的な支出は含まず

■貯蓄
預貯金 夫婦合計で700万円

夫の洋介さんは会社員当時、不動産の営業の仕事をしていました。結果が出たらその分だけ評価されるのでやりがいを感じていた一方、仕事の拘束時間は長く、成績が伸びない時は上司からのパワハラともとれるような叱咤激励を受けることもあり、ストレスの多い環境に身をおいていました。

それでも頑張れてこられたのは家族がいたから。

「子どもは小さく、これから教育費もかかる。こんなところで仕事を辞める訳にはいかない」

洋介さんは歯を食いしばり、必死に仕事をしてきました。

しかし35歳になったある日のこと。洋介さんの心はとうとう限界を迎えてしまいました。

朝、会社へ向かうために電車に乗っていたところ、急に動悸(どうき)が起こり視界も狭まっていきました。パニックになった洋介さんはそのまま途中下車。駅のホームで深呼吸をして気持ちを落ち着かせたあと電車に乗りましたが、再び車内で動悸が起こってしまいました。結局その日は会社に行くことができず、時間をかけて家に戻りました。

「今日1日休めば何とかなるだろう」

洋介さんはそう思いました。しかし翌朝、洋介さんは今まで感じたことのないような倦怠感に襲われ、布団から起き上がることができなくなってしまったのです。

その日から会社に行くことができなくなってしまった洋介さんは、やむなく休職することにしました。洋介さんの会社のルール上、休職をするためには医師の診断書が必要なため、妻に付き添ってもらい精神科を受診しました。