無断欠勤が続き音信不通に…自宅マンションはもぬけの殻
そうこうするうちに急展開がありました。里佳がいきなり出社しなくなったのです。
最初は、あの里佳が無断欠勤なんて珍しいね、という感じでした。しかし、その翌日も翌々日も何の連絡もなく欠勤が続き、スマホに電話やメールをしても通じません。
心配した人事部長が履歴書に書いてあった里佳の母親に連絡すると、「娘とは5年以上一切連絡をとっていない」とけんもほろろに言われてしまったそうです。
社長に「万一のことがあると困るから」と懇願され、人事部の女性とメンターだった私が里佳の自宅の賃貸マンションを訪ね、管理会社に鍵を開けてもらうと既にもぬけの殻でした。これには管理会社の人も驚いていました。
そうして里佳は、私たちの前から完全に姿を消したのです。
しかし、その後に判明したことの方がもっと衝撃でした。里佳を中途採用したのは社長で、なんと、里佳とは千葉市内のスナックで知り合ったとのことでした。里佳は社長に「母子家庭で育ち、母親が再婚したので居場所がない」と話していたそうです。
社長いわく里佳とは「大人の付き合い」だったそうですが、それは社長だけでなく、噂に上っていたイベント企画部長や営業部長も同様でした。
里佳はこうした社内のおじさんたちにさんざん貢がせていたようです。
思わず笑ってしまったのは、里佳のカルティエのネックレスは社長だけでなくイベント企画部長や営業部長も同じものをプレゼントしていたらしいことです。それはバッグや服も同様で、里佳は1つだけ手元に残して後は売り払って現金化していたようです。
それだけではありません。社長からはマンションの家賃を援助してもらい、里佳の家庭事情を知らないイベント企画部長や営業部長には「母が心臓の病気で治療にお金がかかる」と何十万円ものお金を“借りて”いたのでした。
「この前、里佳の“被害者連合”が話し合いをしたら、被害総額は500万円近くになったらしいよ」
事情通の女性上司がまるでその場にいたかのような口調で教えてくれました。
でも、私はもう1人“被害者”を知っています。同期の倉淵君です。倉淵君は里佳にぞっこんで、例の心臓病話を聞いて「これは僕からの気持ちだから」と数万円を渡していたようです。
少し前、「頂き女子りりちゃん」なる女性が世の中を騒がせました。里香の所業はまさにその頂き女子をほうふつとさせるものでした
社長も部長たちも自分の家族にまで話が及ぶことを恐れ、里佳を解雇はしましたが、「会社のお金に手を着けたわけではないから」と警察沙汰にはしないことを決めたようです。
社内には厳重な箝口令が敷かれました。しかし、アルバイト君やパートさんを含めて誰一人として知らない人はいないので、この話がクライアントや取引先に伝わるのも時間の問題だと思います。
※個人が特定されないよう事例を一部変更、再構成しています。