<前編のあらすじ>
現在28歳の菅野千尋さん(仮名、以下同)は地元千葉県にある小さな広告代理店に勤めています。勤め先は全員が顔見知りというアットホームな会社です。ただ、休日出勤が多くクライアントからのハラスメントも日常的にあるという”ブラック”な勤務体系で、高い若手離職率がネックでした。
ある日”知人からの紹介”でめったにやってこない20代の里佳さんが中途採用で入社することに。仕事は完璧、性格も素直で前向き。「最強のアシスタント」を得たと心強く思っていた菅野さんですが、里佳さんは入社してからしばらくたってもなぜか自分のことを教えてくれません。
いぶかしんでいると、企画部部長と手をつなぎホテル街を闊歩する里佳さんを目にします。「そういうことだったのか」と得心する菅野さんでしたが、里佳さんにはもっと深い闇がありました。
●前編:【「若手がいつかないブラック職場」にやってきた実力派新人…20代”坂道系”女子社員の隠された本性とは】
代理店に中途採用で入社してきた坂道系女子
私は大学卒業後、地元の代理店に入社して6年目になります。代理店といっても名ばかりで、その実態は地域の企業や商店の屋外や電車の広告、イベントなどを手掛ける“何でも屋”です。
それでも、小さな会社だけに家族的な雰囲気で上司や同僚もいい人ばかりだったのと、私自身が人と触れ合ったり、一緒に新しいものを創り出したりするのが好きだったので、ここまで何とか続けてこられたように思います。
そんな会社に中途採用で入社してきたのが3歳下の里佳でした。
里佳はうちの会社では少々異質な存在でした。ロングヘアが似合う美形で、服装もフリルのついたブラウスや長めのフレアスカートが多く、清楚なお嬢様的な雰囲気は坂道グループのアイドルのようだったからです。
上司から里佳のメンター役を言い渡された時は正直、戸惑いました。しかし、実際には里佳はどんな業務を任せてもそつなくこなす「しごでき」で、人あしらいもうまいので、メンターとしては“楽勝”どころか、アシスタント的な雑用までこなしてもらって大助かりでした。
そんな里佳ですから、試用期間を終えると、すぐに社内でもエリートが揃うイベント企画部に配置されました。自分が教育係を務めた新人が抜擢されたのはうれしい半面、あっという間に追い抜かれてしまったような寂しい気持ちもありました。