苦労する娘を見たくないと言う母
「はぁー……借金」
妊娠が分かって以来、何かと理由をつけて実家から様子を見に来てくれる母に、美希は大輝の借金のことを相談してみた。
「大輝さんも真面目な顔して分かんない人ね。美希、あなたが我慢する必要ないのよ。これから子供も生まれるっていうのに、黙って借金作るような人と一緒にいても苦労するだけなんだから」
そう言う母の言葉は、どこか冷たく響いた。
「でも……大輝は借金した理由もきちんと話してくれたし、反省してるみたいだし……」
「反省したからって、許せるもの? 借金癖ってなかなか直らないわよ。今回は120万だけだけど、この先もっと大きなお金を借りるようになったら、どうするの? 第一、その120万だってまだ返せてないんでしょう?」
確かに母の言う通りかもしれない、と美希は思った。母の言葉はいつも冷静で正しい。自分が間違えそうになったとき、いつも道を正してくれるのは母の言葉だった。
「私はね、苦労する美希なんて見たくないだけなの」