父と同じように、暴力を振るうようになった元夫

古賀さんの手紙に困惑したのは、我が家の事情もありました。

母の死後、勤務先の航空会社で当時副機長だった男性と親しくなり結婚しました。翌年には長男に恵まれ、彼が「歩はこれまでさんざん苦労してきたんだから、当面は子育てを頑張って、子供の手が離れたら自分のやりたいことをやればいいよ」と言ってくれたのを鵜呑みにし、退職して子育てに専念していました。

しかし、私が家庭に入ったのをいいことに、彼ときたら子育ては私に任せっきりで独身気分で遊び放題。複数の女性の影もちらつき始めました。やんわり注意すると私に手をあげるようになり、それにかつての父の姿が重なって私の我慢も限界を超え、離婚するに至ったのです。

以降は、得意だった英語を生かして小中学生向けの塾で教えながら息子を育てています。

元夫はそれなりの収入があったにもかかわらずほとんど貯蓄もしておらず、慰謝料はありませんでした。息子が20歳になるまで毎月5万円の養育費を支払う取り決めになっていますが、それも“ある時払い”で当てにはなりません。

塾講師の収入などスズメの涙で、我が家の家計は常に火の車です。ですから、古賀さんに対して「父の介護費用は支援しますから、もう私には一切関わらないでください」と啖呵を切ることもできなかったのです。

しかし、そんな私の複雑な心中を知ってか知らずか、古賀さんからはその後も定期的に手紙が送られてきました。

●ケアマネジャーの古賀さんから届く、憎んでいた父の容態や日常を告げる手紙。松野さんは古賀さんに父から受けたひどい仕打ちや絶縁した理由をしたため、返信するのですが……。後編【「会ってもらえなくて当然」絶縁した父から娘に届いたビデオレター、最期にどうしても伝えたかった言葉とは】で詳説します。

※個人が特定されないよう事例を一部変更、再構成しています。