遺言書は子どもがいる場合に使うもの、と思っていないだろうか。ところが実のところ子なし夫婦にこそ検討すべきものである。ではなぜそのように言えるのだろうか。西夫婦の例をもとに解説しよう。

西さん夫婦の遺言書への考え方

60代の西さん夫婦(夫は孝明さん、妻は愛子さん)からはかねてから相続について相談を受けていた。夫婦の意見は相続人として子がいない以上、遺言書を作るなど大がかりな相続対策は不要というものだった。持っている資産の整理を中心とした法律面以外での手続きを進めていきたいと考えていたようだ。

「うちには子どもはいません。なので、今ある資産を夫婦の一方の死後、『他方がどう管理していくか』といった実体面での中心に相談したい」と当初は話を受けた。

それを受け、私は「お待ちください。お子さまのいらっしゃらないご夫婦だからこそ遺言書は必要になります」と意見を述べた。そして、私はその理由を説明する。