まだまだ残暑が続いていた。太陽が容赦なく照りつける中、真理奈は友人家族と一緒に河原でバーベキューを楽しんでいた。

バーベキューグリルの上でじゅうじゅうと焼かれる肉の香ばしい匂い。直前まで雨が降っていたとは思えないほどの青空。時折、湿気をはらんだ風が川辺から吹いてくるのも心地よい。まさに絶好のアウトドア日和だった。

「真理奈ー! お肉焼けたよー! どんどん食べてね!」

「あっ、ありがとう」

友人の声にはっとして振り向くと、夫の佑介がクーラーボックスからまた新しい缶チューハイを取って戻ってくるのが見えた。

その様子を見ていた真理奈は、「ほどほどにしてね」と佑介に声をかけようとして、直前で思いとどまった。なぜなら佑介は、久しぶりのアウトドアということで、「外で酒が飲める」と子供のように心待ちにしていたのだ。

アルコール類が一切飲めない真理奈には酒の味も酔っぱらう気分も理解できないが、佑介があんなに楽しみにしていたバーベキューに水を差したくない。そう思った真理奈は、上機嫌で友人らと笑い合う佑介から目をそらし、にぎやかな川辺へと目を向けた。