読書を楽しみにひっそり暮らしてきた彼を変えたのは?

市田の楽しみは、小説を読むことだった。近所にある古本ショップにいけば、1冊あたり100円~300円でさまざまな文庫本を購入することができた。外国作家のホラー小説にはまり、キングから、マキャモン、バーカーなど、気になる作家の本を探すのも楽しみだった。近所の古本ショップは1店舗しかなかったが、会社まで行く電車の路線には系列店が3店舗あり、それぞれの店舗の品ぞろえが違っているので、いくつかの店舗を回って本を探すこともまた面白かった。小説の数は限りなく、1カ月に10冊くらいの本を購入しても2000円にもならない出費ですんでいた。最近、時代小説も読み始めると、ホラー小説にはない面白さがあった。

月曜日から金曜日は仕事に行って、いつものスーパーで買い物をして帰り、夕飯を作って食べ、シャワーを浴びて小説を読む。毎週同じことを繰り返し、土日は本屋に行くか、たまに映画館に行くような生活だった。毎食を自炊にすると、季節の変化も分かった。これといって病気をすることもなく、生活に困るようなこともなかった。淡々と何事もなく過ぎていく日々、これが何年も続くのだろうと思っていた。

そんな市田は、毎日穏やかな気持ちで暮らしていたのだが、最近、気持ちを騒がせるようなことが起きていた。決して悪いことではないのだが、気持ちが穏やかになるようなことではなかった。それは……。

●人生をあきらめたように過ごしていた市田。しかし、あることから、胸のざわめきを感じるようになり!?  後編【「S&P500」を5年間積み立てたら…「自称・弱者男性」が普通の幸せをあきらめずに済んだ「たった一つのこと」】にて詳細をお届けします。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。