1枚の写真

ページを開くとそれは結婚して間もない頃の写真だった。まだ一美も生まれる前。2人で小さなアパートに住んでいたときのものだった。

信之は大卒で就職をしたばかりで、給料がそこまで良いわけではなかった。麻里子も一美を妊娠するまでは働いてたが、当時の生活は決して裕福とは言えず、やりくりが大変だったことを思い出す。

麻里子がなでるようにページをめくっていると、1枚の写真が目に留まった。

若い信之が宝くじをこちらに見せて笑っている。そこでどうして宝くじを買うようになったのかを思い出した。

お金がなかったので、デートと言えば、近くのデパートを歩いて見て回ったり公園をぶらつくのがほとんどだった。そんなとき、信之は宝くじを10枚買ってきた。麻里子は無駄遣いだよといさめたが、信之はこれが当たれば、でっかい家を買って、高級車を乗り回せるようになるんだと話していた。

結果、5等の1万円が当たり、信之があまりにうれしそうにしているので、麻里子がその様子を写真に撮ったのだ。その1万円でおいしいイタリアンを食べたのを思い出した。大当たりとも言えない額なのに麻里子たちは手を取り合って喜んでいた。

「なのに、どうして……」

麻里子は自分に問いかけた。1000万が当たったのに、なんで自分たちは仲たがいをしている。昔といったい何が変わってしまったというのだろう。麻里子はアルバムを持って1階に下りた。そして書斎で本を読んでいた信之にアルバムを見せた。