父の葬儀
それからも頃合いを見て、真司は真幸を見舞った。
ただ病状は悪化の一途をたどっていて、会話をできたのは最初の1度きりだった。
そうして、最初の見舞いから1年後、真幸は帰らぬ人となった。母と2人で葬儀を切り盛りし、無事に真幸を見送ることができた。
火葬場の外でもくもくと上がる煙を眺めていると、ほなみと亮介が近づいてきた。
「いい式だったね」
「ああ。ホントだな。父さんのことをあんなに多くの人が見送ってくれるとは思わなかったよ」
「警察官として、お義父(とう)さんはとても慕われていたのね」
「あ、ああ……」
そこで真司はうつむいた。
「お、俺がもっとしっかりと父さんと話をしていれば、こんなことには……」
涙がこぼれた。
もっと父との楽しい思い出を作りたかった。そう思うと涙が止まらなくなった。
すると真司たちのやり取りを見ていた亮介がハンカチを取り出した。
「はい、これ」
それを見て、俺は笑った。
「ありがとう」
ハンカチを受け取り、涙を拭う。
ほなみは真司と亮介のやり取りを見て、ほほ笑んだ。そして俺は亮介と手をつないで、火葬場の中に戻る。
父としては誰しもが初心者だ。悪戦苦闘は当たり前。
ただ絶対にこの手だけは離さず、亮介の父親として少しずつでいいから、成長していこうと決意を改めた。
「ほなみ、俺は父さんのように、子供を思いやれる親になろうと思う」
「うん、あなたならなれるよ。だってお義父(とう)さんの息子なんだから」
※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。