<前編のあらすじ>

自動車メーカーで長年活躍してきたNさんは、地元九州の大手自動車メーカーに入社後、同じ会社で働き続けています。生産管理や原価管理を担当しながら、リーマンショックや災害支援なども経験し、波乱万丈の仕事人生を歩んできました。

25年目に転機が訪れ、本社の経営陣に自社の経営上の数字や課題を提案する役割を担いました。それがきっかけとなり、人事部門に異動。その後はシニア社員の活性化を改善するという一大プロジェクトを任されました。

Nさんは悩みながらも、斬新な兼業制度を考案。シニア社員が週2日程度外部の会社で働くことで、給与水準を保ちつつ専門性を発揮できる環境を作りました 。

●前編:【会社に突然「シニア社員のモチベーション革命」を託された40代男性。悩んだ末に導き出した「斬新な解決策」は…】

兼業先が求めていた「シンプルなこと」

ここでNさんは大切なことに気付きます。兼業先の方々が求めているものは、募集要項に書かれていることではなく、案外シンプルなところにあったのです。

例えば「生産性向上」と言っても、まずは物の配置の仕方から始める必要があるとか、トラブルは人材育成が上手くいっていないことが原因で起こっている、ということなど……。そこが分かると今度はどこに誰が適任か分かってきます。

最初、シニア社員は兼業制度をハードルが高いものと感じており、利用する人は少数でした。しかし、兼業先で求められていることが「自分にもできる」と分かると、申込者が一気に増えていきました。

「実は効果を1番実感しているのは、何を隠そう私なんです」と、Nさんは言います。兼業先の候補の企業に訪問して課題を聞くうちに、自分自身が過去にさまざまな仕事をする中で取り組んだ経験、課題を乗り越えて身につけたノウハウなどが活かせる場面が見えたのです。過去の仕事が無駄でなく、違った環境の会社では役立つことがあるのだと実感できました。